【Tokyo Doves】ダイソーで買ったハトのボドゲが面白かったのでルールを考察してみた

先日ダイソーで「トウキョウのハト エサバ・バトル」(英語名 Tokyo Doves) というボドゲを買いました(こんなゲームです↓)。もちろん100円です*1

couple-game.net

なんか以前ネット上でバズったゲームらしく、100円で買えるのが驚きなほど面白くて奥深いゲームです。あまりにも面白いので、ここ最近ずっとこのボドゲの解析をして遊んでいます。
その中で「ちょっと元々のルールだと足りないんじゃないか?」と感じる部分があったので、メモがてら記事にしたいと思います。具体的な解析してみた話はまた別記事で。

通常ルール

冒頭の記事を読んでください(サボり)
実際遊んでみると分かるのですが、幅が4になったときに壁ができること、また4でなくなると壁が消え去るというのがなかなかに曲者で、このゲームの醍醐味となっています。終盤に差し掛かって「よし詰ませたかな?」と思っても、壁が現れたり消えたりすることで思いもよらない逃げ道が残っていたりします。また終盤は必然的に両プレイヤーのハトがひしめき合う形になるのですが、相手のハトを詰ませているつもりが自分のハトが詰んでいた・・・みたいなこともまま起こるため、気の抜けない戦いとなります。

ちなみに冒頭の記事には無いものの「ハトを出す」「ハトを移動する」の他に「ハトを戻す」という操作もオプションルールとして用意されています。以下がルールブックでの記述です:

●ハトを戻す
場にある自分の好きなハトを1つ選び、手札に戻すことができます。
・戻したらすぐに手番が終了します。
・戻した後に、他のハトと辺とも角とも接していないハトが出てしまうようにすることはできません。
※このルールは慣れてから追加しましょう。慣れてからも入れるかどうかは相手と相談してください。

この選択肢がなくても遊べはするものの、このルールがある方がグッとゲームの深みが増すので、以下では採用することにします。

通常ルール深堀り

ゲームの対称性

6種類のハトはいずれも上下左右の反転及び90°の回転に対して対称です。ボードやルールにも向きが存在していません。強いていえば初期配置のみ向きがありますが、仮に初期配置を上下左右の反転や90°回転させたところでゲーム進行は全く変わりません。

ゲームの終了条件

自分のボスハトの四方を別のハトまたは壁に囲まれると、即座に敗北が確定します。その他ルールブックには「※パスという甘い選択肢はありません、即負けです。」とあります。つまり、自分の手番でどの操作も不可能であることが分かった場合は負けになります。実はハトを戻すという操作をありにすると、通常ルールの範囲で「手番中どの操作も行うことができない」というケースはなくなります*2。ちなみに(おそらく起こる頻度は低そうですが)両者のボスハトが同時に囲まれた場合の取り扱いは規定がありません。ルールブックの文言を文字通り受け取れば「両者敗北」ですが、これを引き分けとするか、動かした側が勝ちとするか負けとするかは、解釈次第かと思います。個人的には勝ちか負けかどちらかを採用したほうが明確でよいかなと思います。また千日手(同じ盤面を何度も繰り返してしまう状態)に対する規定が全くありませんが、終盤はかなり千日手間際の場面が登場しがちです。この点は提案したいルールがあるので後述します。

先手必勝?後手必勝?or else?

ゲームの分類のひとつに「二人零和有限確定完全情報ゲーム」というものがあります↓
ja.wikipedia.org
詳しい説明は上を読んでいただくとして、これに分類されるゲームは最善手を指し続けた場合に先手必勝・後手必勝・引き分けのいずれかが定まるようなものになっています。Tokyo Doves千日手の存在さえなんとかできれば、この分類に属することができます。やはり千日手のルールぎめがポイントです。

ちなみに、通常ルールの範囲だと後手必勝でないことは次のようにすぐに示せてしまいます:
もし仮に後手必勝だとすると、先手がどのように指し続けたとしても、後手が適切に対応することでかならず勝利することができます。先手が一番最初に自分のボスハトを斜めに動かしたとします。その結果の盤面は初期の盤面を90°だけ回転したものになっていますが、これは初期の盤面とルール上意味が変わりません。すなわち事実上後手の立場を獲得したわけです。したがって後手必勝の仮定を再び用いて、後手がどのように指し続けたとしても、先手が適切に対応することでかならず勝利することができます。これらを同時に成立させるような状況はないので、後手必勝ではないことが示されたことになります。

ルールの提案

千日手対策ルール

結論からいうと、以下のルールを追加することを提案したいです。

千日手禁止ルール
「ハトを出す」「ハトを動かす」「ハトを戻す」のいずれの操作によっても、その結果実現される盤面が、それまでの相手の手番の操作前に実現した盤面と一致してはならない。

柔らかい言葉でいえば、何らかの操作を実行して相手の手番になった時点で「え?これ何回か前の自分の手番のときと同じ盤面だよ?」となってはいけない、ということです。そうなってしまうような操作を禁止することで、二度と同じ盤面が実現しない=千日手が起こらないという形になります。ゲームの対称性を鑑みれば、より強い以下の制約でもよいかもしれません。コンピューター的にはこのほうが自由度が絞れるので都合が良かったりします。

千日手禁止ルール(強)
「ハトを出す」「ハトを動かす」「ハトを戻す」のいずれの操作によっても、その結果実現される盤面が、それまでの相手の手番の操作前に実現した盤面およびそれを反転または回転したものと一致してはならない。

ただ人間同士で遊ぶ場合であれば、反転・回転で一致するかどうかの判定はなかなか厳しいかもしれません。また「見落としていてうっかり」というケースありそうです。実際は以下のようなゆるいルールのほうが運用上は便利かもしれません。

千日手禁止ルール(弱)
相手の手番の操作によって実現した盤面が、過去の自分の手番の開始時に実現したことのある盤面に一致していた場合、その旨を指摘することでその操作を取り消し、相手の手番をやり直させることができる。相手はその手番で全く同じ操作を実行することはできない。なお盤面が一致した時点での自分の手番の操作を実行した後に指摘した場合は無効となる。

先手の優位性に対する制限

先手が斜めに動かすと事実上の後手に回ることができるということはすでに述べました。千日手禁止のルールを採用することで事実上の後手ではなくなるのですが、さらに踏み込んで以下のルールを採用するのはいかがでしょうか。

●初期盤面に関する制約
先手・後手共に、自分の手番の操作の結果、初期盤面およびそれを反転または回転したものと一致する盤面を実現してはならない。

単にそれぞれのボスハトが辺で接していて他のハトがいない、という状態を本当の初期のみに制限するというルールです。これで先手と後手の自明な対応は崩れるので、よりルールが面白くなるのではないでしょうか。

同時囲みルール

すでに述べましたが、一応明文化しておきます。ひとつの方法を採用しておきます。

●同時にボスハトが囲まれた場合の取り扱い
プレイヤーAの操作によって両プレイヤーのハトの四方が同時に別のハトまたは壁に囲まれた場合、プレイヤーAの敗北とする。

ルール採用の影響

上記で提案したルールを採用した場合、いくつか状況が変わるものがあります。ポイントを箇条書きにしてみます。

  • 千日手がなくなるので晴れて先手必勝・後手必勝の議論ができる。
  • 自分の手番で実行可能な操作がない、という状況が理論上起こりうる。ルールブックに則り、その場合はそのプレイヤーの敗北。
  • 引き分けがないので、かならず先手か後手が必勝である。

次回以降(あれば・・・)の解析の紹介では、これらのルールの下で説明したいと思います。

*1:クソリプがあったので補足ですが、税込みだと110円です。

*2:ボスハト以外が盤面にあるならそれを戻す操作が可能ですし、もしいなくてボスハトが動けないとしたら、その時点ですでに勝敗が確定しているはずです。