【世界のアソビ大全51】ヨットを数学的に考える④:ヒストグラムを調べる

こんにちは。
ヨットを数学的に考えるシリーズは前回一旦完結としていましたが、気が向いたので続編お届けします。第四回の今回は「ヒストグラムを調べる」というテーマでお話しします。前回記事はこちら

ヨットのイメージ。公式サイトより引用
ヨットのイメージ。公式サイトより引用

前回は期待値を最大化する戦略について説明しました。前回の段階では期待値だけしか分かっていませんでしたが、今回はより踏み込んで、この戦略に基づいたヒストグラムについて調べようと思います。

このヒストグラムですが、少し不思議な形をしているようです。自分なりにいろいろと試行錯誤を重ねた結果、かなりシンプルに説明できることが分かりました。この記事では、その説明について紹介します。

この記事は #じゃぱねっと夏の自由研究 に参加しています。

まずは描いてみる

前回までの記事で計算したデータを使えば、各手番で最も良い選択がすべて求まります。しかしヨットはあくまで確率的なゲーム。たまたまいいダイスが出て高得点になることもあれば、運悪く低い点数に終わることもあります。今分かっているのは、とてもたくさんプレイしたときに、その平均がおおよそ 191.77 点になる、ということだけです。

そこで、次の一歩として、最良の選択を必ず行うプログラムに100万回プレイしてもらって、その点数がどのように分布するのかプロットしてみました。それがこちら*1

合計点数のヒストグラム
合計点数のヒストグラム

なんだか不思議な形をしています。角というか山というか、とがったニョキっとなった部分が何個も連なっているのが見て取れます。この不思議な形はなんでしょうか?

不思議な形をどう説明する?

例えばサイコロを5個投げるのをたくさん繰り返して、出た目の和をヒストグラムにすると、このような山一つのグラフになります。

ダイス5個の和のヒストグラム
ダイス5個の和のヒストグラム

もし表に20、裏に0と書かれたコインを用意して、サイコロ5個と一緒に投げた場合はどうなるでしょう?このときは、以下のような山二つのヒストグラムになります。

サイコロ5個+コインのヒストグラム
サイコロ5個+コインのヒストグラム

このデータのうち、コインが表だったデータと裏だったデータをそれぞれ集めてヒストグラムを作ると、ちょうどそれぞれの山に対応することが分かります。

データを仕訳したヒストグラム
データを仕訳したヒストグラム

コインが山を二つにする原因は、山の幅に比べて大きなジャンプを生み出すところにあります。山の幅は大体10~15ぐらいですが、コインは20も動かすので、山から山にジャンプしてしまうわけです。

ヨットの場合にも、この「コイン」にあたる役割が分かれば、ヒストグラムにたくさんの山があった理由が分かりそうです。そういえば、ヨットにも大きなジャンプを生み出しそうな役がいくつかありますね。

  • ヨット:成功すると50点、失敗すると0点
  • ボーナス:成功すると35点、失敗すると0点
  • B.ストレート:成功すると30点、失敗すると0点
  • S.ストレート:成功すると15点、失敗すると0点

そこで、これらの役が成立しているかどうかでデータを分けて、それぞれヒストグラムを作ってみることにします。

データを仕訳してみる

ヨットを仕訳

まずは最もジャンプの大きなヨットから。ヨットあり・なしの部分はそれぞれ山が6つになっていて、これがずれて重なった結果、山8つになっていたようです。

ヨットを仕訳
ヨットを仕訳

ボーナスを仕訳

次に、ヨットありの部分を取り出して、次にジャンプの大きい「ボーナス」のあり・なしで仕訳してみます。これで山が6個から4個になりました。

ボーナスを仕訳
ボーナスを仕訳

B.ストレートを仕訳

ボーナスありの部分をさらに取り出して、B.ストレートのあり・なしで仕訳します。山の数が4個から3.5 (?) 個になりました。

B.ストレートを仕訳
B.ストレートを仕訳

S.ストレートを仕訳

B.ストレートありの部分を取り出して、S.ストレートのありなしで仕訳けすると、0.5個分の部分の山がちょうどきれいになくなりました。これで山3個です。

S.ストレートを仕訳
S.ストレートを仕訳

まだ山が複数残っているので、フルハウスとフォーダイスについても仕訳してみます。

フルハウスを仕訳

S.ストレートありの部分について、フルハウスあり・なしで仕訳したものがこちらです。山の数が3個から2個になりました。

フルハウスを仕訳
フルハウスを仕訳

フォーダイスを仕訳

最後にフォーダイスのあり・なしで仕訳しました。ついに山が1個になりました!

フォーダイスを仕訳
フォーダイスを仕訳

山コレクション

以上から、以下の役・ボーナスたちが山を分けていたことが分かりました。

  • ボーナス
  • チョイス
  • フルハウス
  • S.ストレート
  • B.ストレート
  • ヨット

それぞれのあり・なしで仕訳すると 2^{6}=64 個のデータに分けられます。これをそれぞれヒストグラムにして重ねてみると、こんな見た目になりました。

山をすべて分解
山をすべて分解

改めて全体のヒストグラムと見比べてみると、この中にこんなにたくさんの山が重なっていたのか!という発見があり、とても面白いですね。

合計点数のヒストグラム
合計点数のヒストグラム

ちなみに、期待値付近にあるもっとも高い山二つは、いずれもヨットが成立していないもののようです (右がフォーダイスあり、左がフォーダイスなし)。ヨットは相当に成立が難しいので、あまり積極的に狙わなくてもよいのかもしれませんね。

まとめ

前回求めた最良の戦略を使って、点数のヒストグラムを作ってみました。ヒストグラムにはたくさんの山がありましたが、どの役が成立しているかに着目してデータを仕訳していくと、なんと64個ものたくさんの山の和でできていることが分かりました。

ヨット関連で何か面白いことを見つけたら、また続編を書くかもしれません。

ではまた。

番外編:
smooth-pudding.hatenablog.com


サイコロのイラストはこちらからお借りしました:かわいい&かっこいい無料イラスト素材集|イラストイメージ

*1:データの平均値は191.7点でした。理論の191.77とほぼ一致しています。